ムールヴェードル主体で造られる
プロヴァンスのグラン・ヴァン
プロヴァンス地方の港町、マルセイユの東に位置するバンドール。レスタンクと呼ばれるこの産地特有の段々畑にブドウが植えられている。
この風光明媚な様に心を揺さぶられたのが、アンリ・ド・サン・ヴィクトール。
1975年、50歳でパリにおけるビジネスを投げ打ち、2年後、妻のカトリーヌとともにバンドールのシャトー・ピバルノンを入手した。
現在、ブドウ畑の規模は50haに広がり、海から6キロ内陸に位置する標高240〜350mの段々畑でブドウ栽培。
三畳紀の粘土石灰質土壌に赤用のムールヴェードルやグルナッシュを、泥灰土土壌に白用のさまざまな品種を植えている。
2004年からビオで耕作をはじめた。それにより、エネルギーを感じ、成熟感のあるブドウを収穫できるようになった。
現在ではビオディナミでの耕作もしており、より高い次元でのバランスの良さを目指す。
濃縮度を第一に考えてきた造りから、フィネスを感じる所謂「うまみ」をより引き出していく。
生産量の60%を占めるのは赤ワインであり、品種構成はムールヴェードル90%とグルナッシュ10%。
1990年代まで無除梗だったが、現在は基本的に赤はすべて除梗し、全体の10-20%は全房を使用している。20ヶ月間の大樽熟成。
しっかりしたストラクチャーをもつ赤ワインながら、南仏の太陽のおかげでタンニンはまろやか。
とはいえ、紛れもなく長期熟成型であり、理想的には10年寝かせてジビエやトリュフの香りが出た頃に味わうべきだろう。
生産量の35%にあたるのがロゼ。ムールヴェードル70%と30%のサンソーからなる。
プロヴァンスのハーブを思わせる爽やかなアロマとスパイシーな余韻。
魚、鶏、豚、羊、子牛など、食材を選ばずに合わせられる懐の深いワインに仕上がっている。
わずか5%の生産量しかない白は、クレーレットとブールブーランを主体に、ユニ・ブラン、ルーサンヌ、ヴィオニエを混醸。
フローラルなアロマとミネラルの味わいをもつ、骨格のある白でやはり食事向きだ。
残念ながら2013年4月27日にアンリ・ド・サン・ヴィクトール逝去。
すでに当主として活動している息子のエリック・ド・サン・ヴィクトールにより、ピバルノンの歴史は受け継がれていく。