ブルゴーニュの有名ドメーヌによる
南仏最大のコラボレーション
ブルゴーニュ・ワインの愛好家ならば知らぬ者はない、偉大なる造り手---ドメーヌ・デュジャックの創設者ジャック・セイスは、1980年代末、南仏のプロヴァンス地方で最高のワインを造るべく、適地を求めて模索を開始した。
長いリサーチの結果、見つけたのはエクサン・プロヴァンスの東に位置するナン・レ・パンという小村。プロヴァンスといえども、そこは海沿いのマルセイユから35キロ北東に位置する、”山のプロヴァンス”だ。
そこにあったのは、真南を向いた斜面、粘土石灰質の土壌。とくに石灰質に富み、痩せたその土地にジャックの目は釘付けとなり、ブドウ栽培の新天地として選んだ。
友人であるドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティのオベール・ド・ヴィレーヌ氏、そしてパリ在住のミシェル・マコー氏に声をかけ、賛同を得てプロジェクトをスタート。
プロジェクトは「ドメーヌ・ド・トリエンヌ」と名付けられた。ローマ帝国の時代、3年に一度開催された酒神バッカスを讃える祭典であるトレンニアに因み、また3を意味する”tri"の文字が創業メンバーの3人を表している。
賢明であった証は、いくら石灰粘土質の土壌であろうとも、慣れ親しんだピノ・ノワールを植えてブルゴーニュの廉価版を造ろうなどとは考えもしなかったことだろう。
プロジェクトのスタート時点からまずはブドウ畑に注力を注ぎ、シャルドネ、ヴィオニエ、シラー、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルローなど、地中海性気候に適した高貴品種に植え替えた。
このドメーヌの気候とフランスの偉大なテロワールを彷彿させる粘土石灰質の土壌に適合する、マサル・セレクションにより畑を健全な状態に戻すこと、それが目標であった。
コンドリューAOCにヴィオニエが数十ヘクタールしか残っていなかった1990年に、ヴィオニエの実験的栽培に成功したが、わずか数年後にこの品種が人気を高めたことを考えると、当時としてはかなり先見の明があったといえる。
近年では、この土地に合う品種としてロールの栽培量を増やし、最近5年ほどで、レ・ゾーレリアン ブランで半分以上を構成する重要品種となっている。
樹勢をコントロールし、浸食を抑え、そして土に有機物質を含ませるために2畝ごとに草を生やす草生栽培を実施。常にテロワールの保護に腐心するトリエンヌは、2011年にAB(有機農法)認証を取得した。
ワインのスタイルもじつに明快だ。
白ワインはまず初めに果実のフィネスが感じられ、爽やかさで満たされたタイプ。450メートルという高い標高が、天然の酸味をもたらしてくれる。
一方、赤ワインは成熟度の高い果実味とともにストラクチャーがしっかりとし、複雑さ、上品さ、繊細さを伴うスタイルである。
熟成は、赤も白も小樽の使用を抑え、フードルへの移行を推進している。
1990年にトリエンヌの畑を購入してから35年以上が過ぎ、樹齢が高くなりブドウの状態も安定してきた。また、新しい醸造設備で時間をかけた発酵を行うなど、ワインの品質も年々向上している。これからの進化が楽しみだ。