見事な貴腐ワインを生み出す アンジュー最古のドメーヌのひとつ
ロワール地方のアンジュー地区は、シュナン・ブランから造られる甘口白ワインの宝庫。
とくにコトー・デュ・レイヨンは陽当たりのよい丘に恵まれているうえ、アペラシオンの中央を蛇行するレイヨン川が朝霧を発生させ、貴腐菌の繁殖を促す。
このコトー・デュ・レイヨンに内包される、サブ・アペラシオンがカール・ド・ショームとボンヌゾー。
いずれもとくにブドウの成熟に適した、いわゆるグラン・クリュといえる。
シャトー・ド・フェルはボンヌゾーのエリアにあり、アンジューでももっとも古いドメーヌのひとつである。
2010年に新たにブドウ畑を買い足したため、現在、シャトーが所有するブドウ畑の総面積は55ha。
このうち丘の斜面にある20haの畑でビオディナミに挑戦している。
ボンヌゾーのほか、コトー・デュ・レイヨン、アンジュー・ブラン、アンジュー・ルージュ、ロゼ・ダンジュー、カベルネ・ダンジューなどを生産する。
白ワインの熟成には600リットルのドゥミ・ミュイを用い、全体の60%が通常のオーク樽。残り40%はアカシアの木から作られた樽である。
アカシアの樽はワインのピュアな果実味を引き出し、より洗練された甘味にするという。ボンヌゾーではよりアカシアが増え、それぞれの比率が50%対50%となる。
時代に合わせてアンジューの辛口白ワインも醸造するシャトー・ド・フェルだが、その真骨頂は甘口ワイン。
ロワールのシャトー・ディケムという異名はいまだ健在であり、特種な気候とシュナン・ブランが織りなす自然のスペクタクルによって、このワインを口にしたものは誰しも甘美な陶酔へと誘われるのである。