ふたりの姉妹が紡ぎ出す官能的なしなやかさ
ミュニュレ・ジブールとジョルジュ・ミュニュレがひとつにまとまり、2009年ヴィンテージからジョルジュ・ミュニュレ・ジブールとなった。
前者は現当主マリー・クリスティーヌとマリー・アンドレの姉妹の祖父母が所有していた畑、後者は父ジョルジュ・ミュニュレが自身で広げた畑から構成されるドメーヌで、それまではラベルの意匠は変えず、ドメーヌ名のみ異なっていた。
ジョルジュ・ミュニュレの本職は眼科医だったが、長い闘病の末、1988年に没。ディジョンで薬剤師をしていたマリー・クリスティーヌがドメーヌに戻り、続いて大学で醸造学を学んでいたマリー・アンドレが1992年に加わった。現在、マリー・クリスティーヌがおもに栽培を、マリー・アンドレがおもに醸造を担当している。
所有する畑はジュヴレ・シャンベルタン、シャンボール・ミュジニー、ヴージョ、ヴォーヌ・ロマネ、ニュイ・サン・ジョルジュと広範囲におよび、今でも旧ミュニュレ・ジブールの畑はファブリス・ヴィゴやパスカル・ミュニュレなど優秀な小作人に折半耕作の形で貸し出されている。
またフレデリック・エスモナンのアンドレ・エスモナンの話では、特級リュショット・シャンベルタンの畑はヴォーヌ・ロマネから遠いため、彼らが代わって栽培作業をしているそうだ。
ブドウは収穫後、選果台で厳しく選別され、100%の除梗。4〜5日の低温マセレーションの後、アルコール発酵。必要以上の抽出は望まないのが姉妹のポリシーだ。
トータルで14〜20日のキュヴェゾンの後、樽詰め。新樽の比率は村名で30%、1級畑で40〜45%、特級で70%。樽熟期間は18ヶ月である。
女性の手になるからではないだろうが、ワインはじつにエレガントな造りで、堅牢なリュショット・シャンベルタンですらしなやかさが感じられる。
このドメーヌのリュショットを飲んだ故アンリ・ジャイエは、「ヴォーヌ・ロマネ村のリュショット」と表現したという。
エシェゾーはもっとも標高の高いルージュ・デュ・バと低地のカルティエ・ド・ニュイからなる。
小作人もそれぞれ異なり、性格を異にするふたつのクリマがアッサンブラージュされることにより、複雑でかつバランスのとれたエシェゾーを生む。
じつのところ、もっともお値打ちなワインはブルゴーニュ・ルージュ。リュティニエールというヴォーヌ・ロマネの南東に位置するこの区画は、AOCが出来る前は村名ヴォーヌ・ロマネと見なされていた。
なお、畑名のないジュブレ・シャンベルタン1級はリュショット・シャンベルタンの若木から造られるワインだが、樹も十分に育ったため2012年から本来のリュショット・シャンベルタンとなる予定である。