シャンパーニュ・サロン同様
一人の愛好家の情熱が生み出した
プレミアム アルゼンチンワイン
アルゼンチンの赤ワインと聞いただけで、光にかざしてもグラスの向こうが見えないほど濃厚にして重く、きわめてパワフルなマルベックを想像する人は多いだろう。
しかし、そのようなアルゼンチンワインの概念を根本から覆す1本がここに登場した。
「ティアノ&ナレノ」である。
ワインを生み出したのは ひとりの愛好家
このワインは、ワインの奥深さに魅せられた、あるひとりの医師により生を受けた。
医師の名前はアリエル・サビナという。
アルゼンチンのメンドーサ州ルハン・デ・クージョ生まれながら、フランスのキュリー研究所にも籍を置いた、免疫学の権威として知られる人物だ。
10年におよぶヨーロッパでの生活でワインと親しむうちに、彼の体に流れるブドウ栽培家の血がふつふつと沸き始めた。
なぜならば、彼の祖父がふたりとも、メンドーサのブドウ栽培家だったからである。
祖父の名はそれぞれセバスティアーノ・アッコーラとナザレーノ・サビナ。
通称、ティアノとナレノである。
ふたりは1908年、イタリアからアルゼンチンへ向かう移民船の中で偶然知り合った。
18日間の航海を経てブエノス・アイレスに着いたのち、さらにアンデスの麓、メンドーサへと渡った。
そこで彼らはブドウ園の栽培長として働き、やがて両者の娘と息子が結ばれ、アリエルが生まれたのである。
アリエルは祖国でワインを造る決心をした時、真っ先に祖父たちの姿を思い浮かべ、そして彼らが宝物のように大切に保管していた、手帳の存在を思い出した。
その手帳には、メンドーサにおける畑の善し悪しが事細かに記録されていたのだ。ブドウ畑をもたないアリエルにとって、この手帳は非常に有効なツールとなった。彼はこの手帳にある優良な畑の所有者を訪ね、必要なブドウを買い集めてワインを造ることにした。
究極のエレガンスと 長期熟成のポテンシャルを求めて
しかし万事がそううまくは運ばない。
2005年からワイン造りを始めたアリエルだが、はじめの数ヴィンテージは品質的に満足できず、すべて地元の大手ワイナリーに売却せざるを得なかった。
やっと、納得できるワインに仕上がったのが2010年。
このワインに使われたのは標高1000メートルという高地のブドウで、95パーセントをマルベックが占め、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローが小量含まれる。
いずれの品種も平均樹齢80年の古木からなり、これを徹底的に選別してワインを醸造。
彼はとりわけブルゴーニュ・ワインのエレガンスに惚れ込んでいた。
たとえマルベック主体のワインであっても、フレグラントさや妥当な抽出、滑らかな喉越しなど、ブルゴーニュのピノ・ノワールに通じるスタイルを望んだ。
また抜栓した瞬間から自己主張する一方、時を経るにつれて魅力を失うのではなく、何年もの熟成を経て真価を発揮する、伝統的なワインの価値観を求めてもいた。
そのためにコンサルタントはメンドーサでも活躍するあの著名な国際的権威ではなく、生粋のアルゼンチン人ながらヨーロッパの伝統的な造りを尊ぶロベルト・デ・ラ・モタを起用。
シャンパーニュ・サロン・ドゥラモットの ディディエ・ドゥポン社長が惚れ込んだ
アリエルのワインとそのポリシーに共感したのが、誰あろう、シャンパーニュのサロン・ドゥラモット社長、ディディエ・ドゥポン。アリエルと旧知の彼は、孤高のアルゼンチンワイン「ティアノ&ナレノ」についてこう語る。
「私はアリエルから経緯を聞いた時、発泡性と非発泡性の違いがあるとはいえ、これはアルゼンチンのサロンではないかと考えたのです。サロンも今からおよそ100年前、ウジェーヌ・エメ・サロンというひとりの愛好家によって生まれました。そしてティアノ&ナレノもまた、アリエル・サビナという愛好家の情熱が生み出したワインです。ふたりの共通点は、今までその土地になかった至高の製品を世に送り出すこと。そのためにブドウを徹底的に選別し、さらに真価が現れるまで長い熟成を必要とする点もよく似ています。100年後、ティアノ&ナレノは今日のサロンと同じような存在になるでしょう」
ニューワールド、アルゼンチンの常識を覆し、究極のエレガンスを表現するティアノ&ナレノ。サロン同様、世界中のワイン愛好家が血眼になって探し求める、幻のワインとなる可能性を秘めているのだろう。