冷涼な気候と石灰質の土壌における有機栽培。ナチュラルな造りを標榜する、ワイパラ・ヴァレーのライジングスター。
ブラック・エステートはニュージーランド南島、ノース・カンタベリーのワイパラ・ヴァレーに位置するワイナリー。
1994年にラッセル・ブラックが、オミヒにピノ・ノワールを植えたことに始まる。このワイナリーを2007年に買い取ったのがロッド・ナイシュとその家族。ロッドの娘、ペネローペと結婚したニコラス・ブラウンが、現在、ワインメーカーを務めている。
もともと8haだったブラック・エステート・ヴィンヤードは2011年に4haのブドウを新たに植え、今日、12ha。さらに7.5haのダムスティープ・ヴィンヤードと4.5haのネザーウッド・ヴィンヤードを加え、総面積は24haとなっている。
土壌はおもに褐色をした粘土のローム層だが、母岩は新世界では珍しく石灰岩。活性石灰の強い石灰粘土質の土壌も見られ、このブルゴーニュとよく似たテロワールが、ピノ・ノワールのポテンシャルを約束してくれる。
気候的にも恵まれ、北向き斜面をもつ丘陵地で陽当たり良好。夜間の低い気温がきれいな酸味をキープする。ワイナリーが栽培するピノ・ノワール、リースリング、シャルドネといったブドウ品種にとり、酸が不可欠な要素であることはいうまでもないだろう。
年間降雨量は600ミリと少ないにも関わらず、石灰質の母岩がスポンジの役割を果たし、ブラック・エステートでは灌漑を必要としないドライファーミングを実現させている。
乾燥した気候は病害の心配も少なく、ワイナリーでは有機栽培を実践し、バイオダイナミックにも挑戦。現在、Bio Groの認証を申請中である。
ワイン造りもナチュラルだ。ピノ・ノワールやシャルドネはもちろん、リースリングさえも選抜酵母の添加をせず、畑から持ち込まれた自生酵母で発酵。
ピノ・ノワールは除梗しない全房のままのブドウを一部残すことで、ワインにフレッシュさと複雑味がもたらされる。
瓶詰め時には必要最小限の酸化防止剤を添加するのみ。清澄もろ過も行わない。
新世界にあって、きわめて旧世界的なアプローチの造り手といえるだろう。
ボブ・キャンベルやマイケル・クーパーといったマスター・オヴ・ワインの評価も高く、ボブは2011年のピノ・ノワールに五つ星、94点を与えている。
ワイパラ・ヴァレーを代表するワイナリーのひとつとして、ブラック・エステートの名前は覚えておきたい。
生産者情報のPDFダウンロード:ブラック・エステート