プイィ・フュメのテロワールを学ぶ 最適なテキストブック
ドメーヌ・カイユブルダンは、アラン・カイユブルダンが1980年に創設した比較的新しいドメーヌ。
プイィ・フュメの各地にブドウ畑を所有し、テロワールごとに異なるキュヴェのワインを造る。
近年、2haの畑を買い足したため、所有するブドウ畑の総面積は19haになる。
栽培法はリュット・レゾネ。
除草剤は使わず、畑の一部はトラクターで耕し、また一部で草生栽培を行っている。いずれもブドウの根を土中深くまで伸ばすことが目的である。
また収量制限はもっぱら芽かきによって行い、夏季剪定は稀という。
テロワールは大きく4つに分かれ、これに応じて4つのキュヴェが造られている。
もっともスタンダードな「キュヴェ・ド・ボワフルーリィ」はシリカと石灰が混じった砂質の土壌。爽やかでフルーティな口当たり。
「レ・クリ」はカイヨットと呼ばれる硬い石灰石のあるポートランディアン土壌。力強く、張りがあり、そしてグラもあるワイン。
「レ・コルネ」はキンメリジャン土壌。牡蛎の化石が混じった泥灰土だ。マルメロやマンゴーの香りがし、熟成すると白トリュフに。リッチで芳醇な風味。
「トリプティーク」はシレックス(火打ち石)土壌に植わる樹齢80年のソーヴィニヨンから。パッションフルーツなどの柑橘香にミネラルのニュアンスを伴うフレーバー。凝縮感に富み、そして複雑な味わい。
ブドウは収穫後、圧搾し、デブルバージュ。果実香ばかりが強調され、テロワールの特徴がマスクされてしまうのを嫌って、このドメーヌではスキンコンタクトをしない。
アルコール発酵はタンクで。酵母は加えず、自生酵母による自然発酵を待つ。発酵温度は17〜22度。
シュール・リー状態のまま翌年の1〜3月まで寝かせ、その間に週1回のバトナージュ。マロラクティック発酵はなし。
シレックス土壌のトリプティークのみ300リットルとやや大きめのオーク樽で発酵のうえ、12ヶ月間の樽熟成が施される。
新樽率は3分の1だがワインの複雑さに寄与するのみで、木の香りを感知することは難しい。
テロワールに忠実なカイユブルダンのワイン。プイィ・フュメの土壌を学びたい向きには、最適な教科書となるに違いない。