コルクを守る辛子色の蝋封は長期熟成を促す封印
ヴァンサン・ドーヴィサと同じく、長熟タイプのシャブリを造らせたら右に出るもののいないドメーヌといえば、フランソワ・ラヴノーだろう。
1995年に引退したフランソワはヴァンサンの父ルネと義理の兄弟。現在、このドメーヌを切り盛りするジャン・マリーとベルナールの兄弟はヴァンサンと従兄弟の間柄だ。
したがって、醸造方法も似ており、小樽を用いた伝統的な醸造法をとる。
ただし、発酵のスタートではステンレスタンクを使用。古樽が多いが一部は新樽も含まれ、新樽を使う場合は発酵から新樽に入れてステンレスタンクは用いない。
ステンレスタンクで発酵させたワインを新樽に移して熟成させると、樽香が強くつき過ぎるとジャン・マリー・ラヴノーはいう。
この発酵の誘発に温度調整の容易なタンクを用い、新樽熟成の場合は発酵から新樽を用いるのはヴァンサン・ドーヴィサも同様だ。
所有するブドウ畑の総面積は6.7ha。シャブリに始まり、1級がシャプロ、ビュトー、フォレ、モンマン、ヴァイヨン、モンテ・ド・トネール。特級にブランショ、レ・クロ、ヴァルミュールをもつ。
中でもブランショとヴァルミュールはそれぞれ樹齢70年、60年という、シャブリでは驚くべきほどの古木からなり、集中度の高いワインを生む。
ちなみにラヴノーが所有するシャプロはモンテ・ド・トネールを、ビュトーとフォレはモンマンを名乗ることが可能だが、ここではすべて本来の畑名ごとに醸造、瓶詰めする。
ラヴノーのシャブリについてジャン・マリーは、「最低でも5年寝かせてから飲んで欲しい」という。
10年以上の熟成に耐え、それどころか、熟成によって硬質なミネラルが和らぎ、じつに複雑な風味へと変貌する。
辛子色の蝋封はそのための封印なのだ。