6代目にバトンを渡し、新しい時代へ突入する
プイィ・フュイッセの大御所
2020年ヴィンテージから遂にプルミエ・クリュ認定が22の区画において認められ、今やマコンきっての銘醸地となったプイィ・フュイッセ。
そのプイィ・フュイッセをブルゴーニュ地方南部の田舎酒からコストパフォーマンスに優れたスタイリッシュな辛口白ワインへと導き、世界に大きく広めたのが、5世代にわたってシャトー・ド・フュイッセを守るヴァンサン家。
現当主は5代目となるアントワーヌ・ヴァンサン。先代のジャン・ジャックのころから造りは醸造学のディプロマを持つアントワンヌが取り仕切っていた。
シャトーは15世紀に作られた五角形の塔とルネサンス様式のポーチが特徴的で、総計35haのブドウ畑を所有する。
このうち23haがプイィ・フュイッセで、7.5haがサン・ヴェラン。1.70haのマコン・ヴィラージュと0.90haのマコン・フュイッセもある。さらにボージョレ地区のジュリエナにも2.8haの畑をもち、ガメイから赤ワインを造っている。
プイィ・フュイッセには3つの単一区画もの、「ル・クロ」「レ・コンベット」「レ・ブリュレ」があり、そのうちの「ル・クロ」と「レ・ブリュレ」は2020年から一級昇格が決まった。3つ以外のプイィ・フュイッセの区画はアッサンブラージュされて「テット・ド・キュヴェ」と呼ばれる。
以前は「テット・ド・クリュ」というキュヴェ名でリリースされていたが、同地にプルミエ・クリュが誕生する事が決まった事を受け、紛らわしさ回避のためにキュヴェ名を変更した。
栽培法はリュット・レゾネだ。
圧搾後の果汁は12〜18時間のデブルバージュののちアルコール発酵。
サン・ヴェランとマコン・ヴィラージュにはタンクを用い、テット・ド・クリュは7割がオークの小樽(新樽は25%)、3割がタンクでの醸造となる。
単一区画ものとヴィエイユ・ヴィーニュは100%樽発酵・樽熟成。レ・ブリュレとヴィエイユ・ヴィーニュは新樽100%、ル・クロの新樽率は70%、レ・コンベットには新樽を用いず、3〜5年使用済みの古樽で醸造する。
マロラクティック発酵はヴィンテージごと酸のバランスを見たうえで決め、2003年や2009年のようにまったくしない年もある。2009年はバトナージュもしなかった。
ジャン・ジャックの時代は樽香が顕著に感じられたシャトー・ド・フュイッセのプイィ・フュイッセだが、アントワーヌが醸造を見るようになり、より洗練され、バランスのとれたワインへと進化した。新樽100%のレ・ブリュレさえ、新しい時代を予感させるスタイルとなっている。
ヴァンサン家はアントワーヌの家族のほかにも、ブドウ畑を所有する親戚筋が数多くいる。
それらのブドウをまとめて造るラインが、ネゴシアンラベルの「J.J.ヴァンサン」だ。
これにはドメーヌでも若木などのブドウが使われることもある。また2003年以降は親戚のブドウ畑もシャトー・ド・フュイッセのスタッフが管理のうえ醸造。
事実上、ドメーヌものとなんら変わりのないアイテム群となっている。