伝統的な樽醸造を守り続ける長熟シャブリの造り手
シャブリには早飲みタイプの白ワインというイメージが定着している。じつのところ、シャブリにもムルソーやピュリニー・モンラッシェ以上に熟成可能なものが存在する。
それがヴァンサン・ドーヴィサとフランソワ・ラヴノーのワインだ。
両者の造りやワインのスタイルはよく似ているが、それはヴァンサンの父、ルネとフランソワが義理の兄弟だから当然ともいえる。
まずはヴァンサン・ドーヴィサから紹介しよう。
1970年代以降、シャブリではニュートラルで生産性のよいステンレスタンクを使った醸造が一般的になったが、ヴァンサンの父、ルネは伝統的な小樽の使用を頑なに守り続けた。
もっとも寒冷なシャブリのこと。冷えきったセラーでは発酵がなかなか始まらないこともあるので、アルコール発酵のきっかけはタンクで行っている。
樽自体、そのほとんどが何年も使用した古樽で、新樽は少ない。また通常のピエス(228リットル)だけでなく、シャブリで昔から使われていたフイエット(132リットル)も見られ、その古典ぶりが強調される。
ただし、当のヴァンサンに言わせれば、樽醸造はとりたててワインの品質を決める、決定的要因ではないらしい。大切なのは畑だと主張する。
ヴァンサンは1998年に3haの区画で実験的にビディナミ農法を始め、その結果が良好なことから2002年にはすべての畑をビオディナミに転換した。目に見えて土壌のバランスが改善され、病気が減り、腐敗果も少なくなったという。
現在、畑の面積は12.35ha。プティ・シャブリから特級レ・プルーズ、そしてレ・クロまで。
1級ラ・フォレは4.53haという、このドメーヌ最大の面積をもつクリマで、区画が分散しているためにそれぞれ性格のバラツキが大きい。すべてをアッサンブラージュすることで複雑味が生まれ、完成度の高いワインになるとヴァンサンはいう。
2003年から友人がイランシーにもつ畑を賃貸耕作し、赤ワインにもチャレンジしている。
コート・ドールのようなボディこそないものの、赤い果実のフレーバーが愛らしい、チャーミングな赤ワインに仕上がっている。